豪州の家族法制度の特徴及び子の親権問題についてQ&A
1.豪州の家族法制度(離婚、親権・面会交流、養育費)の特徴
豪州における家族法制度は連邦制定法であるFamily Law Act 1975(1975年家族法典法)を軸にした連邦法システムで、連邦家庭裁判所(Family Court of Australia)を中心に他様々な連邦裁判所及び各州における治安判事裁判所(Local Courts)が管轄しています。同システムは準州も含め豪州全土において適用されますが、西オーストラリア(WA)州だけは例外的に同州制定法であるFamily Court Act 1997を持つため、他州とは異なるシステムを採っています。
豪州はコモンロー制度も併せ持っており、他の様々な各種法律分野と同じように、家族法システムの中でも制定法とコモンローが同時に用いられています。連邦・州議会が作る制定法と異なり、コモンローは法廷で裁判官が作る法律であるためケースロー(判例法)とも呼ばれます。裁判所は判決を下す際には通常、過去の似た案件で出された判決で使われた理論と同じものを使って判決を下します。似た案件が過去に存在しない場合には、現行の制定法がその案件にどのように適用されるべきかを裁判所が判断し判決を下します。こうしてできる新たな判例は「転機となる判例」という意味でランドマークケースと呼ばれ、ランドマークケースが現れる度にコモンローが変更されることになります。
一般に「離婚裁判」と言われるものは豪州の家族法システムの中では3つに大別され、それらは、離婚をするための裁判、子の養育方法や子が誰と一緒にどこに住むかを決めるための裁判、そして財産分与に関する裁判です。これらは全て独立した手続きで、必要に応じて個々の申し立てを裁判所で行います。離婚を求める裁判の手続きで子に関する問題や財産分与の取り決めを求めることはできません。また、離婚するからといって子が誰とどこで住むかについての命令を裁判所から得るよう義務付けられているわけでもなく、また、離婚と同時に財産分与をしないといけないわけでもありません。
豪州での離婚は届出制ではなく、裁判で得る命令によって成立するものです。現行の家族法ではいわゆる「破綻主義」 が採られており、離婚に至る双方の原因(不貞行為、DVなど)は全く問われません。結婚して2年以上が経過し、12か月以上の別居期間(家庭内別居も含む)があり、いずれか片方がこの結婚はもはや修復不可能であると信じていることのみが条件とされ、これら3つの条件さえ満たすことができれば離婚は成立します。また、申し立ては配偶者の内どちらか一方の署名がありさえすれば行うことができます。なお、この破綻主義 の原則から豪州には慰謝料請求の概念もありません。
現行のFamily Law Act上は、夫婦間の争議だけではなく、内縁関係(De Facto Relationship)間の子の問題と財産問題についても規定を設けており、財産問題に関する手続きに関しては婚姻関係間の手続き方法と比べて若干の違いがありますが、子に関しては、嫡出子(婚姻関係で生まれた子)、非嫡出子(内縁関係で生まれた子)の別による権利の違いは法律上一切存在しません。したがって、裁判所で行われる子の養育や居住に関する手続きはもとより、社会保障給付金などの手続きにおいても得られる結果に差はありません。また、現行のFamily Law Act上では内縁関係には同性関係も含まれます。
一般に「親権」と呼ばれるものはFamily Law Act上、現在では「親としての責任・義務」とした意味の”Parental responsibilities”の言葉で総称され、その言葉は「法律により親が子に対して持つ全ての義務、責任、権限、職権」と定義されています。このParental responsibilitiesは、別居、離婚、再婚、そしてその子と一緒に住んでいるかどうかにかかわらず、子が18歳になるまで持ち続けます。日本の場合と異なり、離婚をするに当たって父母の内どちらがParental responsibilitiesを持つかを決める必要はありません。これが「共同親権」であると言われる理由です。しかし、このParental responsibilitiesは子の長期的な人生設計にとって欠かせないことについての意思決定は両親が「共同」で行うことが望ましいと考えられているだけのことであり、子が父母のどちらとも同じ長さの時間を過ごすことが望ましいと言っているわけではありません。したがって、実際上では、子がどちらか片方の親だけと日々の生活(この先「居住」と統一します)をしながらも、父母が共に話し合いをしてその子の行くべき学校を決定しているような家族が大多数であるわけです。したがって、日本で言われる「親権」とは意味合いが異なるため、この文書の中ではParental responsibilitiesを「養育権限」として統一したいと思います。
「面会交流」と呼ばれるものは現行のFamily Law Act上では「子が親と過ごしたりコミュニケーションしたりする時間」として”time spent”と”communication”という言葉で表されています。子が一緒に居住していない方の親と過ごす時間のことで、週末、誕生日、父の日母の日、クリスマス等の日にいつからいつまで、さらに監視付き、宿泊付きかどうか、誰とどこで何をして過ごすか、何を食べさせるか(食べさせないか)、電話での通話は何曜日のいつからいつまでなど、個々の状況にあわせてありとあらゆる形が事細かに取り決められ、そして実行されます。最近ではEメールやSMSメッセージはもとより、スカイプでのビデオ通話やフェイスブックなどでの交信も当たり前のように裁判所の命令に盛り込まれるようになっています。
養育費については、いずれの親も子が18歳になるまで支払い義務を持ち続けます。養育費としていくら支払われるべきか、そしてどのように徴収するかは個々の自由とされていますが、支払い金額の査定と徴収を政府機関にゆだねることもできます。Child Support Agency(以下「CSA」)と呼ばれるこの機関は家庭裁判所とは完全に独立しており、CSAが査定をすることが可能な子に(つまり豪州国内に住んでいる子)ついては、家庭裁判所は養育費についての命令を下す権限を持っていません。
査定は父母双方の課税所得に対して行われ、様々な要素が考慮されます。CSAは徴収にあたって、様々な手段(給料からの天引きや銀行口座からの直接引き出しなど)を講じる権限が与えられており、支払いが滞っている場合は滞納している親を相手に請求訴訟を行うこともあります。
2.Q & A
Q1. 日本で離婚手続きを行うために、子を連れて日本に帰国するのは問題ないでしょうか。
A. 豪州に住んでいる子を相手親の了解を得ないで海外へ連れ出すことは、大変大きな問題となる可能性があります。もしそれがその子の養育権限に関する裁判中、あるいはそのような命令が既に出ている場合は、禁固刑(3年)を含む罰則対象の違法行為になることもあります。この理由は、父母と自由に接することができない環境に子を置くことが、子の「親との関係を保つ権利」を取り上げる行為としてみなされるからであり、海外はおろか、他州に移ることさえ大問題に発展することがあります。相手親は、子が連れ去られた先が日本であることが分かっている場合、たとえそれまでにその子の養育に一切関わっていなかったとしても、豪州側から子の奪還手続申請を行うことができます。この手続きは豪州政府機関が行うため、申請者自身が費用負担をする必要はありません。この手続きの結果、子が豪州に連れ戻された場合には、その後子が居住する場所や養育の行われ方等についての裁判が豪州側で行われることになります。そうした場合、裁判が終わるまで、その子が無断で国外に連れ出されることがないように、その子は豪州連邦警察の管理する出国禁止リストへ記載されることになるでしょう。さらに過去に相手親に無断で子を連れ出したという事実自体が、裁判で自らに不利に働くことも大いにあり得るでしょう。
Q2. 共同親権とは何ですか。
A. 別居や離婚、そして再婚をしていようと、そしてその子と居住していようといまいと、子が18歳になるまで父母はその子に対する養育権限をどちらも持ち続けるということです。「共同」と言われる理由は、日本では離婚の際、子の養育権限を始めとする諸々の権限を持つ親を父母のうちいずれかに決めなくてはならない(つまり「単独」)のに対して、豪州ではその決定が義務付けられていない(つまり「共同」)ことにあるわけですが、Family Law Actではこの養育権限が「共同」で行使されなければならないと規定しているわけではありません。子の養育権限に関する裁判において家庭裁判所は、「養育権限を行使する責任が父母の間で同等に分割され共同で意思決定がされることが、子にとっての最善の利益である」とした推定理論のもと審理します。しかし、子が相手親と接することによってDVの対象になる場合など、この推定理論を当てはめることは子の最善の利益に反するとされる場合も多く、そうした際には、一方の親だけに単独養育権限が与えられたり(つまり「単独親権」に最も近い権限)、また、行使できる権限が限定されたりします。また、この推定理論は「子の一生の問題に関わるほど長期的で重大な事柄に関する権限行使」に対してだけ裁判所が当てはめているもので、「子が親と日々一緒に生活する時間の長さ」に対しては当てはめません。子が父母のうちどちらと居住するか、あるいは過ごす時間の長さや頻度について争われる裁判では、「子の最善の利益」に加えて、「本当に実行が可能かどうか」についてが考慮されます。さらに児童心理学者の見解や、年齢や成熟度によってはその子自身の意見が考慮されることもあります。
Q3. 養育費はどのように決めるのでしょうか。
A. 養育費の金額(そして取り立て方法)は父母の間で自由に決めて構いませんが、金額の査定と取り立てをChild Support Agency(以下「CSA」)と呼ばれる政府機関に任せることもできます。両方の親が査定を受け、支払い査定額が多い方が少ない方に差額を支払うことになります。査定は課税所得(総収入からコストを引いた金額)に対して行われ、対象の子の年齢とその子がそれぞれの親と過ごす時間数、そしてその子以外にも養育費が支払われている子が家族にいるかどうか、などが査定をする時の要件になります。CSAのサービスを受けるための登録は連邦政府のDepartment of Human Servicesのウェブサイトから簡単にオンラインで行うことができ、父母以外に子の養育をしている(祖父母など)者であれば、誰でも申請することができます。ただし、養育手当てなどの社会福祉給付金を受給しながらCSA登録がされた場合は、妥当な限り相手親に養育費を要求するようCSAから促されます。もし妥当な期間内(現在13週間)に養育費の支払い要求をしない場合は、支払われていた養育手当ては最低支給額に下げられることになります。ただし、養育費の支払い要求をすると他方親から暴力を受ける恐れがある場合や、相手の居場所が不明である場合などには、養育費の支払い要求はしなくても良い、と認められる場合があります。
Q4. 相手からのDVが酷くて離婚したいのですが、離婚裁判時にDVを主張すると、相手親から子を遠ざけるための抗弁と思われ、不利と聞いたのですが、本当ですか。
A. 豪州の離婚裁判では離婚に至る原因は全く問われませんので、DVの存在とは無関係に、離婚することは可能です。しかし、子の養育権限や居住に関する裁判では、DVの事実は自分と家族を将来的に保護する目的で大変重要な要素となるだけでなく、現在ではその開示をすることが法律で義務づけられてもいます。2012年6月に施行された新法は、崩壊する家庭の中でのDVの存在がより深刻にそして慎重に対処されることを目的としています。DVとその対象被害者の定義が大幅に広がった上、被害者が「(一般の目から見ても)妥当に」恐れを感じるかどうかがもはや追求されなくなりました。さらに、以前の法律では、子に直接暴力(児童虐待、わいせつ行為、近親相姦など)が与えられていることが立証できない限り、DVを理由に相手親を子から退けることは大変困難でした。しかし、新法では子のDV被害の定義として、「暴力行為にさらされることによる心理的危害」や「深刻なネグレクト(育児放棄)」が新たに加えられ、「さらされる暴力行為」の説明として「死や危害を意味する暴言を耳にすること」「家族に対する暴力行為を見たり聞いたりすること」「暴力を受けた家族をいたわること」「破壊された器物の後片付けをすること」「警察や救急隊員が処理する現場を見ること」などの具体例が挙げられています。こうしたDVの事実や可能性は、規定のフォームに詳細を開示し裁判所に提出されることが新法で義務づけられています。また、この法律は、当事者間で和解に至った場合に作成される合意書の中にも、過去にあったDVの事実、将来的に起こる可能性、子がDVにさらされる危険の有無を開示することも義務づけています。
Q5. DVが裁判で認定されるためには、どのような証拠が必要であり、また、どのような手続きが必要ですか。
A. DVの被害にあったら次のDVから自分と家族を守るため即座に裁判所で抑止命令を取得すべきです。抑止命令の発令自体は加害者の犯歴となるわけではないため、命令は比較的容易に下ります。抑止命令は警察が主体となって得られる場合と被害者本人が裁判所で申し立てを行って得る場合の二通りが主なもので、DV被害が裁判所で認められやすいのは被害届が出された警察が行う前者の方で、命令も短期間で発行されます。被害者本人は煩雑な手続きを行うこともなく、審問日に出廷し裁判官からの質問に答えるだけです。本人申し立てで行う手続きは各州のLocal Courts(治安判事裁判所)と家庭裁判所のうちどちらでも行うことができます。いずれの裁判所でも求められる証拠は本人の供述の他、個々の状況に応じて、警察への被害届、治療記録や医師の診断書、証拠写真、証拠文書など様々です。ひとたび抑止命令が下りたら、通常、加害者側は被害者とその家族には一定期間近づくことができなくなります。子の養育権限や居住に関しての裁判が行われる際には、過去に出された抑止命令の事実は大変重要視されることで、特に命令が有効である場合には、子が加害者である親と接するべきかどうかについて、子の最善の利益と子をDVから守ることのいずれが優先されるべきかが問われることになります。また、DVの程度や内容によっては児童福祉局が主体となり一方の(あるいは両親共に)親から子を守るための保護命令が発令される場合もあります。こうした場合、福祉局からの書面による許可がない限り、家庭裁判所は保護対象の子を加害者である親に接する命令を下してはならないことになっています。
Q6. 相手親が、子供の親権を渡さないと、自分の滞在ビザに同意しない,クレジットカードを取り上げると述べ,自分を現在住んでいる国から追い出そうとしています。どのようにしたら公平に離婚および子の親権について協議できるのでしょうか。
A. 家庭裁判所で財産分与の申し立てと子の居住に関する命令を得るための申し立てを同時に行うべきです。財産分与の申し立ての中には暫定(中途)命令として配偶者扶助の申し立てを行う必要もあるでしょう。家庭裁判所での申し立てを行う前には通常、カウンセリングによる当事者間の和解努力が必要とされますが、DVが絡んでいる場合や、その他急を要する正当な理由がある場合は、カウンセリングは免除され、申し立てを即座に行うことが可能となります。結婚や内縁関係を基にした永住権申請の場合は、2年間の一時滞在期間中関係が継続すれば永住権が発給されます。一度発給された永住権は本人に帰属しますので、特例的な状況を除いて、パートナーの希望や一方的な申し出で永住権が撤回されることはありません。もしこの2年間の一時滞在期間中に関係が破綻したのであれば、先述の裁判所での申し立てと同時に、移民局で所定の手続きを始める必要もあります。この暫定期間中に関係が破綻し、その関係の間に子が出生している場合は、養育義務を理由に永住権発給を受けることができる例外的な対象となることも考えられます。ちなみに一時滞在中にDVの被害に遭い、そのため関係を継続させることが事実上不可能となった場合(例えば、配偶者に抑止命令が発給されたため別居を余儀なくされた場合)にも、例外対象として永住権発給を主張することは可能で、そうした主張は、たとえその関係の間に子が出生していない場合においても有効です。
Q7. 経済力がなくて、弁護士が雇えません。外国語力もないことから、離婚裁判において主張できず困っています。どうしたら良いですか。
A. 豪州各州にLegal Aid(リスト参照)があります。これは州政府予算で運営されている法律事務所で、勤務弁護士あるいはパネルとして選任されている私選弁護士が実際に案件を遂行します。ただし、このサービスを受けるには、申請時に大変厳しい二種類の審査を通過しなければなりません。一つは法律問題の種類と案件内容(財産分与以外についての裁判であり、勝算がある案件であるかどうか)についての審査、そしてもう一つは申請者の経済状況(雇用されているかどうか、国内外に申請者が所有する資産の価値、預金額、さらに家族や友人からの金銭的援助があるかないか)についての審査です。サービスが受けられるようになれば、通訳や翻訳は全てサービスの範囲内で行われるようになりますが、申請の時点で申請者のビザの種類や英語力が審査の対象となる場合もあります。また、利益相反を禁止するポリシーがあるため、相手方が既にLegal Aidのサービスを受けている場合には申請は受け付けられません。Legal Aidからのサービスが受けられない場合は最寄のコミュニティリーガルセンター(リスト参照)で、自分の状況に見合ったサービスが受けられる機関や団体を紹介してもらうとよいでしょう。コミュニティリーガルセンターは地域住民のための無料法律相談所です。ここでは勤務弁護士やボランティアの私選弁護士が駐在しており、案件に関する具体的なアドバイスを受けることができたり、様々な法律支援を受けたりすることができます。さらに、豪州の私選弁護士の中には低価格、あるいはボランティアベースで案件を遂行する弁護士(プロボノ:pro bono lawyers)もいます。各州のLaw Society(弁護士協会)やNational Pro Bono Resource Centre(リスト参照)などでそうした弁護士を紹介してくれます。
Q8.面会交流(visitation)とは何ですか。なぜ、離婚した後も子どもを相手親に会わせないといけないのですか。
A. 現行のFamily Law Actは、「親は子を養育する義務を持ち、子は親に養育される権利を持つ」と謳っています。つまり、親は子と居住したり接したりする権利は一切持っておらず、親と居住したり接したりする権利を持っているのは子の方である、ということです。裁判所の用いる推定理論(Q2参照)は、子がこうした権利を父母の両方に対して同じ様に行使できるようにする必要がある、と推定しているためです。そして、両親の別居や離婚とは無関係に子の権利は守られるべきである、と考えられているからです。ただし、先述(Q2)のとおりこの推定理論は様々な状況下で覆されるものですので、例外なく「離婚後も子どもを相手親に会わせないといけない」わけではありません。なお、‘Visitation’, ‘contact’, ‘access’の言葉は、現在Family Law Actの中では使用されておらず、これらの言葉は全て「子が親と過ごしたりコミュニケーションしたりする時間」として”time spent”と”communication”という言葉に置き換えられています。 ちなみに以前使用されていた’custody’, ‘residence’, ‘guardianship’とした用語も、現在では「(子が)共に居住する(親)」と言う意味の”live with”の用語のみに置き換えられています。このように用語の変更が行われた理由は、こうした言葉が、子供があたかも親がコントロールしたり所有したりする対象の「物」であるかのようなイメージを与えてしまうと思われたためです。子供を財産分与の取引対象とするような誤った認識を人々の中からなくすために、近年行われ続けてきた変更です。
Q9.離婚裁判の結果、面会交流の実施についても判決が下りました。しかし、離婚前の相手方の行動を考えると、面会交流中の子どもに対する危害が心配でなりません。どうしたら良いですか。 /
A. 先述の2012年の法改正(Q4)からも明らかであるとおり、DVに対して家庭裁判所に求められている姿勢や対応、そして被害者を保護する社会システムや支援団体(リスト参照)は以前にも増してさらに充実しています。子の養育権限や居住に関する裁判において、子の最善の利益が最重要視されることは先述のとおりですが、両方の親と接することから得る子の利益と、深刻なDVから子を保護する必要性の選択が問われた時、最近(2007年の判例より)の家庭裁判所は、後者を優先する傾向にあります。したがって、正当に裁判が行われた上で「面会交流」の実施が下りたことを前提にすれば、以前にも増してより慎重な裁判所の判断の上の判決である、と言えるでしょう。そうした判決では第三者の監督・監視の下「面会交流」が行われるよう指示されていることも多々あります。必ずそうした指示を守ることが何より重要です。また、裁判終了後も両親が利用できる様々なカウンセリングサービスや子供自身をサポートするための施設やプログラムを提供する機関もあります(リスト参照)。また、子の養育に関する命令はどれ一つとして変更不可能なものはありません。親の状況もそして子自身の状況や成熟度が変わるのは当然のこととみなされているからです。既存の判決が実際にうまく機能していない、変化に対応していない、などと思われる時には、即座に判決の変更の申し立てを行うべきです。そしていつでもそうした申し立てができるよう、常に子の様子の変化に気をつけながら、家族全員の環境の変化に自らが柔軟に対応する姿勢でいることが重要であると思います。