在シドニー総領事通信 : アーカイブ
第2回 シドニーにおける日本美術 - 令和元年(2019年)11月15日
シドニーに着任して約1か月が過ぎました。その間,最も強い印象を受けたのは,シドニーの地で日本美術が大きく紹介され,関心を集めていたことです。
村上隆氏による「ジャパン・スーパーナチュラル」展の開幕宣言
11月1日,ニューサウスウェールズ州立美術館で,「ジャパン・スーパーナチュラル」展の開幕行事が開催されました。地上階のホールを約1000人が埋め尽くす大盛況で,ブランド館長とハーウィン州文化大臣の挨拶,迫力のある和太鼓演奏の後,日本の現代美術家の村上隆氏が「皆で楽しみましょう!(Let's have a party!)」と開幕を宣言しました。展示は,百鬼夜行絵巻から浮世絵,水木しげるの漫画,そして現代美術家の作品に至るまで,日本における妖怪や幽霊など超自然的な存在の起源と現代へのつながりを浮き彫りにした内容です。
シドニー市内中心部に展覧会の垂れ幕
今,市内中心部には,この展覧会の看板や垂れ幕が多数掲示されています。毎日の英語ガイドに加え,毎週土曜日には当地在住の日本人ボランティアもこの展覧会の日本語ガイドに協力しています。来年年初にはスタジオジブリの「千と千尋の神隠し」や「もののけ姫」などの関連映画も上映予定で,展覧会自体は来年3月まで開催しています。また,国際交流基金のシドニー日本文化センターは,この展覧会と連動する形で,本年10月から来年1月までホラーマンガ展を開催しています。
ニューサウスウェールズ州立美術館正面
今回の展覧会は,オーストラリア人の学芸員が,世界中から作品を集めて実現したものです。開幕行事に出席した現代美術家からは,「展示の配置や手法は極めて洗練されており,日本では見られないもの」との感想を伺いました。私も,日本への深い理解・洞察とオーストラリアの多文化主義の視点の双方があってこそ生まれた展覧会と感じました。
ニューサウスウェールズ美術館新館起工式でのべレジクリアン州首相,
妹島・西沢SANAA両代表他
11月7日,同じニューサウスウェールズ州立美術館で,新館の起工式が開催されました。新館の設計は,コンペの結果,2015年に国際的に有名な日本人建築ユニットSANAAが選出されました。今回の起工式では,べレジクリアン州首相とハーウィン文化大臣の挨拶の後,SANAAの妹島・西沢両代表の挨拶と仏式地鎮祭が行われ,州の一大プロジェクトへの日本の貢献が広く認知されました。
シドニー市立図書館のあるダーリング・スクエアの「エクスチェンジ」
建築といえば,隈研吾建築都市設計事務所が手掛けたシドニー市内ダーリング・スクエアの「エクスチェンジ」も竣工したばかりです。11月9日には,その中にある市立図書館の開館式典が行われました。
「海辺の彫刻展」に出展された大西治・雅子両氏の作品「熊の部屋(Kuma Room)」
また,シドニー近郊のボンダイ・ビーチからタマラマ・ビーチまでの遊歩道では,1997年から毎年恒例となっている「海辺の彫刻展」が,今年は10月下旬から11月上旬まで開催されました。約100の作品の中で,日本人の彫刻家の作品は約1割を占めています。息をのむような美しい当地の海岸線に,日本人による彫刻が世界各地の彫刻と並んで展示され,貢献していることを嬉しく思いました。
日本の美術は,日豪双方の関係者の尽力により,当地シドニーで様々な形で紹介され,相互理解に貢献しています。総領事館としても,このような交流の深化に向けて,できる限り協力させていただく所存です。
https://sculpturebythesea.com/bondi/