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捕鯨問題における日本の立場

捕鯨に関する日本の立場

捕鯨類は、80数種ありますが、絶滅の危機に瀕している種類もあれば、増えすぎている種類もあります。

日本は、シロナガスクジラのように絶滅の危機に瀕した鯨類の保護を強く支持しています。

一方で、資源が豊富で限られた捕獲が鯨の総数に悪影響を及ぼさないと国際的に認められている種類だけを枯渇させないように持続的に利用することを求めており、過去の乱獲の歴史は繰り返さないとの立場です。

これまでの経緯

国際捕鯨委員会(International Whaling Commission:IWC)の目的は、「鯨類資源の保存と有効利用、捕鯨産業の秩序ある育成」の2つなのですが、80年代に入ると反捕鯨運動を唱える非捕鯨国の加盟がグリーンピースの指導的役割の下で急増し、82年「商業捕鯨モラトリアム(一時停止)」が採択されました。モラトリアムは、IWC科学委員会の勧告に基づくことなく「クジラの捕獲頭数を定める出生率、死亡率等科学的数字には不確実性があるから」との理由で導入されました。また、この決定には「1990年までにゼロ以外の捕獲枠を設定する」との合意が付いていました。

1990年、IWC科学委員会は、鯨資源包括的評価の結果、南氷洋のミンククジラは76万頭と認め、現在の管理方式に基づけば、100年間に毎年最低2,000頭から4,000頭を捕獲することが資源に何の問題も及ぼさず可能であるということを示しました。しかしながら、今現在も反捕鯨国側の反対によりこの当時の同意は反故にされ続けています。その中で、日本はモラトリアム導入の理由である「不確実性」を覆すことにより、持続可能な商業捕鯨を再開するためにさらに科学的調査を強化し捕獲調査を実施しています。調査捕鯨によって、より正確なクジラの生息数と生態系を継続的に調べ、厳密な管理の下で商業捕鯨を再開すればクジラの生息数に全く影響がないことを反捕鯨国に立証して理解を得るために地道な努力が続けられています。

しかし、一部の強硬な反捕鯨国は、「クジラの資源状況が良くても、悪くても、捕鯨には反対である」と公言すらしています。このような状況の中、ノルウェーはモラトリアム決議に異議申し立てを行い商業捕鯨を実施、捕鯨推進国のアイスランドはIWCを脱退し(2003年に再加盟)、カナダ、フィリピンも脱退しています。しかし、日本はあえて脱退しないという立場をとっています。この日本の態度は、日本がクジラという世界共通の水産資源に対して科学的根拠に基づく「持続可能な利用」を呼びかけ、反捕鯨・非捕鯨の国々にも理解を得ようとする努力に他なりません。(1982年、日本もノルウェー同様、モラトリアム決定に異議申し立てを行いましたが、米国200海里水域における日本の漁業を認めないとの圧力を受け、やむなく異議申し立てを撤回し商業捕鯨を停止しました。しかし、商業捕鯨の停止後、日本漁船は遺憾ながら、結局米国200海里水域から閉め出されることとなりました。)

鯨と日本人のかかわり

日本人は、鯨を頭から尻尾、皮から内臓まで丸ごとすべて完全に利用してきており、日本人と鯨の深い関わりは石器時代の遺跡、伝統芸能、鯨の墓や碑、食文化として日本全国至る所に見受けられます。

(1)食文化

日本では、仏教の伝来とともに676年「牛、鳥、犬、猿、猪の肉を食うなかれ」という禁止令が出され、「古事記」でもこれらの肉を食すべからずとの殺生戒があります。このため、鯨を含む水産資源による食文化が発展しました。鯨は、昔は「勇魚(いさな)」と呼ばれ、室町時代の有名な調理本である「四条流包丁書」では最高の献立とされました。

日本の鯨料理は、江戸時代に庶民に広く普及しましたがこの鯨料理の特色はどんな部分も見事に調理した点にあり、たとえば、大阪府の「ハリハリ鍋」、千葉県和田の「タレ」、全国的に普及した「くじら刺身」は赤肉、北海道網走の「鯨汁」、本州西部の「コロ」は脂皮、全国的に普及した「おばけ(さらし鯨)」は塩蔵のひれ、北九州の「百尋」は小腸、和歌山県太地の「エンバ」は歯茎、「袋わた」は肺、佐賀県の「松浦漬け」は軟骨をそれぞれ調理しています。

(2)文芸

日本最古の歌集「万葉集」にも「鯨魚(いさな)とり」が12首も歌われ、江戸時代の「東海道中膝栗毛」にも鯨食を楽しむ様子が描かれています。また江戸時代の「鯨肉調味方」をはじめとする多くの鯨料理の記録が残されており、鯨を食べる習慣が庶民生活に浸透していたことを示す文学作品、料理書、錦絵、絵巻、俳句等を挙げれば枚挙にいとまがありません。

(3)祭りと芸能

北海道白糠町、平取町に残る「アイヌの鯨踊り」、三重県四日市市の「鯨船神事」、長崎くんちの「鯨の汐吹き」等日本各地に鯨にまつわる祭りや芸能が残されています。日本人にとって鯨は、豊かさや幸いをもたらす象徴(=恵比寿)とみられ、そうした祭礼には招福と除災の意味が込められています。また、日本の伝統芸能である「文楽」の主役である人形は、鯨のヒゲの柔らかい弾性によって、まるで本当に生きているかのような滑らかな動きが可能となります。しかしながら国立文楽劇場では、文楽の人形の補修に必要なヒゲのストックは底をついています。

(4)信仰

「鯨一頭で七浦が潤う」と言われたように、捕鯨は地域に大きな恩恵をもたらしましたが、同時に殺生を伴うため、全国各地で鯨の供養塔や墓、過去帳などがつくられ法要を営むなど鯨の魂を供養する信仰や儀礼が行われてきました。その背後には日本人の「生あるものはすべて魂を持ち肉体が滅びた後も魂は残る」という独特の宗教的生命観があり、家畜に感謝し供養する伝統が培われる素地のない欧米の価値観とは対局をなしています。このように日本では、人間は、人間同様に価値ある生物の生命を奪い食糧としなければ生きていけない業を背負っているという認識があり、この認識が鯨の供養が長年に渡って行われてきた背景となっています。

南極海の鯨類の生息数

IWC科学委員会は、1990年、南極海にミンククジラが76万頭存在すること、また、1992年、南極海で毎年2,000頭のミンククジラを100年間捕獲しても資源に影響がないと推定しています。

1904年に始まった南極海での英国などによる大量捕獲で、20万頭いたシロナガスクジラは、数百頭にまで減少したといわれています。

他方、シロナガスクジラの減少に伴い、その穴を埋めるように、繁殖力の強いミンククジラが大幅に増加しました。シロナガスクジラが捕獲禁止となって40年が経ち、少しづつ回復してますが、低い水準にあります(1,260頭(IWCによる推定値))。

○ミンククジラ  761,000頭(南極海全体)※
○ナガスクジラ
インド洋系群   31,000頭(南緯40度以南)
西大西洋系群   16,000頭(南緯40度以南)
○ザトウクジラ
豪州西部系群   31,800頭
豪州東部系群    3,728頭
※南極海のミンククジラについては、最新の推定値についてIWC科学委員会で試算中です。

世界の捕鯨文化と日本の沿岸小型捕鯨の困窮

現在でも捕鯨は世界各地で行われています。これらの捕鯨は、過去に米国や英国が行った鯨油(機械油、石鹸用等)だけを目的とした浪費的で乱獲につながった捕鯨ではなく、長い歴史と独特の文化に根ざした、クジラを食料などとして有効に無駄なく使う持続的捕鯨です。日本の捕鯨を含むこれらの捕鯨を科学的根拠もなく否定することは、正当な文化と伝統の否定に他なりません。1991年のIWC科学委員会では、日本の太平洋沿岸を回遊するミンククジラの推定生息数は2万5千頭と意見の一致を見ています。日本は、商業捕鯨モラトリアムによって困窮している伝統的捕鯨地域社会(網走(北海道)、鮎川浜(宮城)、和田浦(千葉)、太地(和歌山)等)を救済するために、モラトリアム導入以来毎年IWCへミンククジラ捕獲枠50頭を要求してきましたが、反捕鯨国によって阻止され続けています。

第2期南極海鯨類捕獲調査(JARPAⅡ)について

商業捕鯨モラトリアム(一時停止)は、鯨類資源に関する科学的知見の不確実性を理由に導入されました。

日本は、科学的データを蓄積することによって、この不確実性を解消するために第1期南極海鯨類捕獲調査(JARPA)を開始しました。調査によって、南極海に生息するクロミンククジラの資源管理に必要な多くのデータが収集され、JARPAの成果は、IWC科学委員会においても高く評価されました。

さらに、18年間の第1期調査の結果、南極海生態系の構造が変化していることが、クロミンククジラの解析を通して明らかになりました。海洋生物の持続的な利用を図るためには、その変化がどこに向かっているのかを見極めて、適切な管理や利用方法を検討することが必要です。そこで、①クジラを中心とする南極海生態系の解明、②複数の種類のクジラを一括して管理するモデルの開発等を目的とした新たな調査が必要となりました。

具体的には、JARPA(1987年11月~2005年3月)の調査内容を踏まえ、資源動向の把握に必要な、成熟年齢や妊娠率等の変化を検出するために必要な最小限のサンプル数を統計学的に算出し、捕獲頭数としました。捕獲したクジラからは、成熟年齢、胃内容物等の多くの科学的データを収集します。

1. ミンククジラ  850頭±10%
2. ナガスクジラ  50頭(当初2年間は10頭)
3. ザトウクジラ  50頭(当初2年間は捕獲しない)

ちなみに、南氷洋のザトウクジラ、ナガスクジラが絶滅の危機に瀕していることはなく、資源が急速に回復しており、特にザトウクジラについては年10%以上の増加を示していることはIWC科学委員会でも受け入れられています。

なお、同調査では、非致死的調査も並行して行いますが、非致死的調査から得られるデータは限られており(例えば、資源の動向を把握するためには年齢は絶対に必要なデータですが、現在のところヒゲ鯨類についてはその内耳に蓄積する耳あかのかたまり、歯鯨類についてはその歯がなければ年齢を正確に判定することができません)、また遊泳速度の速いミンククジラに対しては、非致死的調査が困難であるということが、IWC科学委員会においても認められています。

ホエール・ウォッチングへの影響

IWCの科学委員会はザトウクジラは年に約10%の割合で増加していることに合意しています。このため、ザトウクジラを極少数捕獲してもホエール・ウォッチングに悪影響を及ぼすことはないと考えられます。

捕鯨とホエール・ウォッチングはお互いに相手を排除するものではなく両立するものです。日本、ノルウェー、アイスランドにおいては、ホエール・ウォッチングと鯨の捕獲の両方が受け入れられており、これら双方の活動は、鯨が永久に存続していくよう健全で豊富な鯨資源を維持するという同じ目標を共有しているのです。

調査捕鯨の鯨肉を販売することは、疑似商業捕鯨の証左であるとの批判

調査が終わった鯨の肉は、日本政府による適切な監督の下で市場に販売されています。これは、国際捕鯨取締条約第8条に科学的研究のために捕獲した鯨は可能な限り加工して利用しなければならないと規定されていることに従っているからです。そして、この販売代金は、政府の指示に基づき調査費用等に充てられています。

(参考)国際捕鯨条約第8条2項「前記の特別許可書に基づいて捕獲した鯨は、実行可能な限り加工し、また、取得金は、許可を与えた政府の発給した指令書に従って処分しなければならない。」

日本に対する「票買い」批判について

日本は、捕鯨国・反捕鯨国にかかわらず、世界中の開発途上国の発展への自助努力を支援するため政府開発援助(ODA)を実施してきています。日本は、ブラジル、アルゼンチンをはじめとする多くの反捕鯨国にもODAを実施しています。日本と同様の立場をとっている国々は、海洋生物資源の持続的利用を支持するとの自らの信念に基づいて加盟しているのであり、これを「票買い」の結果と主張するのはそのような国々に対して失礼ではないでしょうか。また、このような国々に対し、反捕鯨国政府や環境保護団体により強烈な圧力が加えられていることも残念ながら周知の事実です。

クジラと漁業との競合

日本が北西太平洋において行った調査捕鯨では 、クジラが大量の魚を食べている事実も判りました。鯨類による世界中の海洋生物の補食量は、世界の漁獲高の約3~5倍と推定されます。ミンククジラは魚の餌であるオキアミはもちろんのこと、カタクチイワシ、サンマ、スケトウダラを大量に捕食し、しかも季節ごとに旬の魚を好んで餌としていることも明らかになりました。

捕鯨問題に関心のある方

以下のウェブサイトをご参照下さい。

政府・国際機関

外務省ホームページ

(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fishery/index.html)
水産庁ホームページ

(http://www.jfa.maff.go.jp/j/whale/index.html)
国際捕鯨委員会

(http://www.iwcoffice.org)
ワシントン条約

(http://www.cites.org)

研究所

遠洋水産研究所

(http://fsf.fra.affrc.go.jp)
日本鯨類研究所

(http://www.icrwhale.org)

関連団体

日本捕鯨協会

(http://www.whaling.jp)
日本小型捕鯨協会

(http://homepage2.nifty.com/jstwa)
鯨ポータルサイト

(http://www.e-kujira.or.jp)

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